30年ほど前、竹細工を一心不乱に作り続け、小学校の卒業文集には「竹に囲まれて生活したい」と書いた男の子がいました。
予言したかのように、今まさに竹に人生を捧げている豊能町出身の職人さんと出会いました。
「竹やぶで困ってる人……豊能町にいないですかね?」
はじめましての挨拶から間もなく、そう切り出した「高木銘竹店」の代表、高木 彰さん。幼少期は豊能町で過ごされ、現在は亀岡・保津町に製造工場を構えています。
銘竹(めいちく)、恥ずかしながらわたくし初めて耳にしたキーワード。一体それ何なんですか?
材料の時点で「工芸品」。茶人・千利休も愛した銘竹
機械化・大量生産が当たり前になった現代で、工程のひとつひとつを手作業で、1本1本丁寧に製造される銘竹とは「材料の時点で《工芸品》」と言われる高級竹材。自然にできた竹本来のシミや経年さえも味わいになると、茶室や茶道具、建材や造園などで一級品を求める方々に好まれているのだとか。その一方で、今は銘竹の作り手がほとんどいないんです、と教えてくださいました。
今までまったく知らなかった世界で興味津々。「へぇ〜!」「ほぉ!」の連続。
立ち話だけではもったいないと、後日製造工場へ遊びに行かせてもらうことにしました。
自然豊かな豊能町で育ったからこそ、この職を選んだ
「保育所生活が楽しくてね、その中で体験した「竹馬づくり」がきっかけでしたね。」
豊能町で暮らした当時を振り返りながら、ご自身のルーツについて教えてくれた高木さん。それからというもの、お父さんに山へ連れていってもらっては、竹を調達。川西市平野のサンシャイン(現在のコーナン)に行っては、のこぎり、ドリル、ナイフ……とひとつひとつ道具を増やしていったそう。気がつけば、自作の竹細工に囲まれていた少年時代。
これまで人生のターニングポイントは多々あったそうで、一度竹の世界から遠のくものの「一生の仕事にするなら自分にはやはり《竹》しかない」と決心されたのが27歳の頃。一歩一歩確かめながら、結果的に今の銘竹の世界へ辿り着いたと言います。
光風台小学校の恩師に言われた、ひとこと
「銘竹職人」という職業はあまり知られていないことから、なにそれ?と言われることに慣れっこな高木さん。
先日たまたま小学校6年生の頃にお世話になった恩師に出会う機会があり、紆余曲折の末に現在の仕事に就いたことを報告すると「アキラらしいなー!」と笑顔で合点され、逆に驚いたのだとか。
当時、竹細工を作っちゃあ逐一先生に見せにいく、そんな生徒だったそうですから、きっと担任の先生も今の高木さんの在り方をお聞きになってさぞ嬉しかっただろうなぁ〜!
小学生の頃は、作り方を友達にもレクチャーし竹笛を大量生産。みんなで公園の夏祭り(地元民には「中グラ」と言えばピンとくるはず)でひとつ20円で売ったというエピソードも。30年以上前、竹笛を売りさばく豊能町ボーイズを想像し、思わず頬がほころびました。
そんな高木さん、小学校の卒業文集には「竹に囲まれて生活したい」と残しています。(キャラの濃い小学生だ…(笑))
これまでのエピソードを聞いた後だと『納 得』の2文字でしかないのですが、そのように書いていたことをご自身も忘れており、最近になって文集を発見し、たいそうビックリしたのだとか。
銘竹ができるまで
高木さんは13年ほど京都の老舗店で製竹に関わり、2年前に独立。おひとりで「高木銘竹店」を切り盛りされているのですが、聞けば聞くほど気の遠くなるような地道な作業や力仕事をコツコツと続けてらっしゃるのでした。
高品質の銘竹を求めて、高木さんの腕を見込んだ問屋さんが、この工場まで足を運んでくるのだそうで、目の肥えた問屋さんからの「OK」が出るまでは、思わず固唾を吞んでしまう瞬間なのだとか。
どのような工程で銘竹は出来上がるのか、教えていただきました。
- 竹に傷がつかないよう竹林を掃除し、いらない竹は間引くなどの竹林の整備から始まる。
- 良い環境で筍が上質な竹へと成長するよう、年間を通じて整備し続ける。
- 竹の伐採後、トラックへの積み込み等もすべて手作業で行い、工場へ。
- 竹は立てて置いて水抜きし、その後ブラシで1節づつ丁寧に洗う。
- 青竹のままだと腐ってしまうため、専用の機器を使って3回炙り「油抜き」という加工を行う。もちろん焦げたらアウト。
- 「竹が熱いうちに押し曲げて冷やす」を一節一節繰り返して、竹材がまっすぐになるように補正。
- 天日干しを行うことで、白竹へと変化。
さまざまな銘竹とその個性
工場には個性的な銘竹が並んでいました。
工業製品のようにどれも単一で統一されたものに美しさを見出すのではなく、シミや変形・傷など自然や経年が作り出す造形を愛す世界──、これがウワサの侘び寂びの世界か……!
根っこをわざと残した孟宗竹。華道界では、根っこを活かした個性的な花器として重宝される。 亀甲竹は孟宗竹の突然変異種。自然の力でこのような姿形になるのだとか。 しみ竹。シミの場所や濃さで売値が変わる。茶道で使われる茶杓では、しみ竹で作ったものが最高級とされる。 七福神の布袋さんのおなかに似てることから名付けられた布袋竹。釣竿や杖などに使われる
銘竹職人は「竹やぶに命を吹き込む守り人」でもある
銘竹の作り手が今ではほとんどいないこともあり、材料となる竹が足りない事態が続いているそう。高木さんは竹を切らせてもらえる場所を探しています。
「2、3年単位での長〜いお付き合いになると思うんで」と高木さんは言います。
竹藪の中まで光がしっかり入るように地面を掃除したり、竹同士がぶつかって傷をつけないよう間引きや枝落としを行ったり、そういった地道な竹林整備も高木さんの役目。竹材として使えるくらいの上質な竹が育ち伐採できるまでには最低でも2〜3年はかかるそうで、年間をとおして竹林を管理していきます。
竹やぶの管理で困られている方へ
「竹を切るのが大変……」
「管理が大変……」
「気になっているけれど自分ではできなくて……」
竹林の管理で困られている方、ぜひ高木さんに連絡してみてください。
※すべておひとりで手作業で行うため、立地条件等でお断りする場合もございます。あらかじめご了承ください。
問い合わせ先
高木銘竹店 代表 高木彰さん
電話:090-7750-4823
MAIL:ogo77504823@gmail.com
お問合せの際は「トヨノノPORTALを見て」「竹藪の管理の件で」とお伝えいただくとスムーズです。
3 comments
《銘竹》・・・・『竹』の奥深さを初めて知りました!
そういわれてみれば、手をかけることが叶わずにいるのでは?と思われる竹林を見かけることがあります。素晴らしい素材の宝庫が、あちこちに埋もれているのかも知れませんね。
(#^.^#)
コメントありがとうございます!
そうなんです。聞けば、竹藪の管理も手間暇かかって高齢な方にはやはり辛いのだとか。
なので、竹藪のお手入れに手が回らなくて困ってる方、心に引っかかってる方とうまくマッチングできればいいな、と思います。
[…] 高級竹材「銘竹」の職人は、竹やぶに命を吹き込む救世主。 […]