能勢電の終点にある妙見口駅。同じ大阪とは思えないほどの里山風景が並ぶこの界隈。ここで古民家を改築してコリビングスペースを運営している鶴田さんにお話を伺ってきました。
コリビングスペース。いいですよね。昔からそういうのに私もあこがれがありまして、中学の時の進路相談に「ムツゴロウ王国に就職」って書きました。後日先生に「お前ムツゴロウ王国って何かわかってるの?」って聞かれて、さあ?先生は知ってるんですか?って聞きかえしたらしばらく考えて「……ヤギの赤ちゃんが逆子で生まれてくるからそれを引っ張って出すとか?」という答えが返ってきたのでムツゴロウ王国はやめてニンジャって進路変更して帰った思い出があります。いや、私のムツゴロウ王国のなつかしい思い出は別にいいですね。ムツゴロウ王国の思い出ですらないし。進路相談の先生とただしゃべっただけだし。
昔住んでた者ですと言って、おじいちゃんが突然訪ねてこられた
──「北摂里山空き家再生プロジェクト」ってなんでしょう?
言ってしまえばこの里山ベースハナビそのものがプロジェクトと言えますね。ここは築100年の古民家なのですが、DIYで改修してコリビングスペースとして運営しています。
北摂里山地域のどうにもならない空き家って多いんですよ。それを買取or低価格で賃貸で借りて、DIYワークショップにて人を巻き込みながら再生を行い、賃貸・売買で移住者の住居や店舗を提供していきたいと考えています。
──築100年てすごいですね!100年て!え?100年!?
増改築しながら維持されてたらしく、年代によって造りが違うんですよ。あ、ここは70年くらい前だな、ここは50年くらい前だな、って。私もここに住むまでは古民家もDIYも素人でしたが、わかるようになります。それくらい(年月の積み上げが家に現れる)。
──へー。
この前、突然おじいちゃんが訪ねてこられて。私昔ここに住んでいました。って。聞けば隣の学校の、先生たちの下宿場所として提供してた時代もあるらしく、ここが再び人が集まる場所になったと風の便りを聞きつけて、訪ねてこられました。自分の人生だけでは絶対出会わなかった人と、この家を通じてるから出会うっていうのは、歴史を持つ古民家ならではのことだと思いました。
空き家を再生すれば町は変わる
──空き家って多いんでしょ?だったらプロジェクトはじゃんじゃん進めていけますね!
ところがそうもいかないんですよ。空き家と言っても古民家ですので、雨漏りはしますし壁がないとかトイレがないとかざらで、ただ貸したい売りたいってのができないんですね。空き家は多いのに貸せない。需要と供給があってないんですね。圧倒的に需要が足りてないです。
──トイレないとかヤバいですね。
トイレないとヤバいですよね。なので、そういった物件をDIYしてリフォームしていくわけです。さらに、ただリフォームするだけで無く、DIY・リノベーション・空き家再生に興味が有る方をワークショップ形式で呼び込んで手伝ってもらうようにします。そうする事で地域との繋がりを作り自然とまちづくりの一員として巻き込むようになるのがまず目的のひとつ。
──ひとつ。
また、空き家がDIYにて修繕されていく様子をSNSで発信する事で、関係人口を拡大できるっていう、ふたつの効果が望めるわけです。
──ふたつの効果が望める。
実際に、Facebookページのいいねは1383。2018年の6月から移住してきたんですけど、2年8ヶ月かけてそれまでに27人が住みまして、今月で10人が定住しています。
イベントは今まで86回やりまして、参加人数がのべ1056人。そのうちのほとんど、8割9割の人が、これまで豊能町を知らなかった、イベントを通じて豊能町を知ったと答えています。これは関係人口の拡大に貢献したと言えるのではないでしょうか。
──言えるのではないでしょうか。ってめっちゃ貢献してますやん!この人たちにもそれぞれ知り合いがいて、その人たちにまた豊能町が伝わることを考えたら、私の計算では実質5億人が知ったと言っても過言ではないですね。
そうですね。日本の人口を既に超えてますね。
※編集注)レポーターはときどき変な冗談を言います。鶴田さんはやさしいのでレポーターの戯言にあわせてくださっています。
プロジェクトを通じて豊能町のよさをもっと知ってもらいたい
──鶴田さんがこつこつされてる開かれたコミュニティづくりが、関係人口の拡大に繋がっていくような気がします。最後の質問になるんですが、このプロジェクトを通じて豊能町をどう感じてもらいたいですか。
一人でなんでもできるスーパーマンよりも、より多くの人がそれぞれの強みを活かしたつながりを作りたいんです。それを通じて、豊能町のもつ、街へのアクセスの良さや自然との豊かさ、それに加えてコミュニティの居心地の良さを感じてもらえればと思います。
──それが人それぞれの生業づくり、につながるわけですね。本日はどうもありがとうございました。
ありがとうございました。
再生が難しいほどワクワクする
「古民家リフォームの何がワクワクするかって、規格が統一されてないがゆえの面白さ、なんですよね」と、インタビュー後の雑談で教えてくださった鶴田さん。実際やりはじめてみないとわからない、継ぎ足し継ぎ足しで大事にされてきた家ならではの、再生させる喜び、っていうのがあるんですねー。
実際に再生された部屋もお見せいただいたんですが、全部町内のヒノキやスギを贅沢に使ってて、そんじょそこらのおうちよりとっても贅沢な空間に生まれ変わっていました!
住んでるかじゃなくて、関わってくれる人がいい
プロジェクトリーダーの鶴田さんがおっしゃってた、「ひとりのスーパーヒーローの能力に頼った地域活性化では、再現性がないんですよね」っていう言葉が妙に気に入ったインタビューでした。
再現性。私の解釈では、きっとこのプロジェクトはたくさんの人に生業<なりわい>を作っていきたいんだなあと感じました。感じましたっていうかはっきりそうおっしゃってましたけどね。
インタビューを通じて、さまざまな印象的な言葉をみつけたのですが、そのなかのひとつに、住んでるかどうかじゃなく、関わってくれる人を増やしたい、という言葉がありました。そう語る時の、マスクごしにこぼれる笑顔が印象的でした。
◆ このプロジェクトの連絡先
合同会社エンカレッジライフ 里山ベースハナビ 鶴田 勇気さん
住所: 吉川67
Tel: 080-3547-5723
Mail:tsuruta@encourage-life.com
◆ SUPPORT – 応援おねがいします
- 空き家の紹介・相談
- プロジェクトを進める仲間
- 空き家バンクとの連携
取材日:2021/02/10
文・撮影:宇都宮正宗
写真提供:里山ベースハナビ