能勢電鉄ときわ台駅から続くなだらかな坂道の先にある、懐かしい昭和の雰囲気が残る一軒の家屋。憩いの場としての活用や、特技を活かしチャレンジしたいひとに場所を提供するスペースに生まれ変わった「maruta」を訪ね、代表の久保亜矢子さんにお話しを伺いました。
「maruta」はこれまでも、これからも、私の原点。
── marutaはどういった場所ですか。
ここは元々、生まれ育った実家です。ときわ台の住宅開発初期の昭和46年に両親が建て、私も結婚するまでここに暮らしていました。数年前に両親が急逝し空家になり、一度は手放すことも考えたんです。でも、日がたつにつれ愛着が蘇ったこともあり、DIYで改装を行い、のんびりと楽しく集える憩いの場として活用することにしました。
また、今後活動していくにあたり、周辺にお住まいの方に認知してもらいやすいよう、旧姓の丸田から「maruta🏠」と名づけました。洒落た感じのネーミングもいろいろ考えたんですが、旧姓由来の「maruta」にビビッと来て、一番しっくりと落ち着きました(笑)。
── とてもすっきりと広々とした空間になっていますが、改装にあたりご苦労はありませんでしたか。
フリースペースとして空間を広くするために、遺品整理の段階で家財道具の多くは処分しましたが、手先の器用だった母の手芸作品や父の陶芸作品などを、和室を利用してギャラリーのように飾ることにしました。まったく新しい場所に生まれ変わらせるのではなく、両親の存在を感じられる場所にしたかったからです。
DIYの計画は私が立て、作業は日曜大工が得意な夫に任せました。勝手口の土間に床を張ってもらったり、食器棚の脚をカットしてもらったり、無茶も頼みましたが上手く仕上げてくれました。夫がいなければ「maruta」は実現できなかったので、とても感謝しています。
興味のアンテナと直感を信じて、「いっちょかみ」を楽しみたい。
── marutaでは今後どういったイベントを計画されているのですか。
コロナ禍ということもあり、密にならないよう駐車スペースを利用したガレージセールを考えています。トヨノノ応援会にも参加されているトヨノつながるWEマーケットさんが開催されている、ウォーキングマーケットの出店場所として利用してもらうのもいいですね。
それから、趣味や特技を活かして講師デビューしたい方の、はじめの一歩として利用してもらうことも考えています。
普段は仕事を通して、乳幼児を持つお母さん達やシニアの方々と触れ合うことがおおいので、なにか少しでも彼らの力になれたらと。仕事ではなく、個人としてざっくばらんにお話しできる、いわば憩いの場のようになれば嬉しいなと考えています。大勢で賑やかに、というよりは少人数でゆったりと過ごせる場所が理想です。大勢は入れる広さも無いですし(笑)。
── たくさんのアイデアを伺って私もわくわくします。
何かひとつを深く突き詰めることがあまり得意ではないんです。何事も広く浅く、その時に興味を持った物事やご縁に身をゆだねるのが、私らしさなのかもしれません。いろいろやってみたいことはありますが、実は今一番やってみたいのは、介護予防や孤立の解消につながり、趣味などを楽しむためにシニアの方が気軽に集うことができる「通いの場」をつくることです。
母の葬儀には、私も子どもの頃からよく知っている方々がたくさんお越しくださいました。改めて母の交友関係の広さを知り、あたたかい人々に恵まれたこの場所で生まれ育ったことが誇らしく思えました。自宅も豊能町にあるので、一生この町で過ごすことになると思います。「豊能町を私が変えたい!」というような野望は私にはありませんが、お互いに顔も名前も知っている方達と一緒に楽しく過ごしていきたい、というのが今の思いですね。
── お仕事とmarutaの活動の両立はどのようにされていますか。
大阪弁の「いっちょかみ」がまさに私の生き方です。何かひとつだけに打ち込まず、いくつかの拠り所を持つことでバランスを取っているのかもしれません。昨年50歳という節目を迎えたこと、子育てもひと段落し心や時間にゆとりが生まれたことで、marutaの活動へいっちょかみ出来るようになりました。非常勤職員として勤めているので、休日を利用しながら楽しんで取り組みたいと思います。
── 最後に、地域のみなさんへ向けてメッセージをお願いします。
「おしゃべりして楽になった!来てよかった!」と思っていただけるような場所づくりを、一歩ずつ進めています。昭和の一軒家らしいこじんまりとあたたかな空間にしたいと思っています。穏やかな気持ちになれる憩いの場として、新たな挑戦への「いっちょかみ」の第一歩として、新たな興味への「いっちょかみ」の入口として、「maruta」を活かしていきたいと思っています。「maruta」でみなさんにお会いできることを楽しみにしています。
久保亜矢子(くぼ・あやこ)
幼少期より豊能町ときわ台で過ごし、現在も町内に自宅を構え人生のほとんどを豊能町で暮らす。豊能町保健福祉センターにて管理栄養士として住民の健康づくりに従事している。とよのわたし研究員2期生。
◆ このプロジェクトの連絡先
m a r u t a 久保 亜矢子さん
住所: ときわ台2丁目
◆ SUPPORT – 応援おねがいします
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取材日・2021/02/10
文・東好美
写真提供・久保亜矢子
撮影・東好美