「市民団体とよのわたし研究室」は、2019年に発足。メンバーは、2018年に始まった豊能町女性活躍人材育成事業の「とよのわたし研究室」講座を受講した研究員のみなさんです。講座は毎年開講され、全5~6回で3期まで開講されています。講師による講義や発表会を通して自分を見つめ直し、「わたしらしさ」を探求する人材育成の場となっています。また、講座を修了後、研究員が生み出したプロジェクトは、豊能町のあちこちで自分らしさを活かし動き始めています。「市民団体とよのわたし研究室」もその一つ。“わたしが変われば、地域が変わる。”を合言葉に、まずは、”お母さん”が安心して過ごす場所を作る<Mothers Smile プロジェクト>で、自分らしく生きる人を増やしていく活動をしています。
このキラキラとした笑顔が印象的なパンフレット、みなさんも見覚えがあるのではないでしょうか。実はこのプロジェクトが町おこしの核<コア>となっている理由と、メンバーのみなさんが終始笑顔のひみつを探るべく、代表の三好麻理子さん、研究員の滝本弥生さん、和田敦子さん、稲本泰惠さんにお話を伺いました。
「傾聴」する大切さを学んだ
── みなさんは「とよのわたし研究室」講座の1期生だそうですね。何故参加しようと思ったのですか?
三好:お陰様で幸せに暮らしてきましたが、何となく自分自身に自信がありませんでした。「自分は何がやりたいのか?」と漠然と感じていた矢先に、募集のチラシを見てチャレンジしてみました。
滝本:福祉職で、仕事も充実していてあまり関心がなかったのですが、友達に誘われたのがきっかけで。今思うと、何か変わりたい!挑戦してみたい!と思っていたのかもしれません。参加者は、初対面の方がほとんどで、自分を見つめ直すには、この環境がいいのかなと思いました。
和田:「人生100年」と言われていますが、50歳を迎え子育ても一段落。「残り半分、これからどうやって生きていくのだろう?」と思っていた頃、とても大きなチラシが目に留まり、豊能町の本気を感じて、これは受講しないと!と思いました。
稲本:豊能町ではこれまで「女性向け」の学びの講座企画が少なく、残念に思っていました。そんな時に目にしたのが「とよのわたし研究室」研究生募集というチラシでした。女性を対象とする、今までに無い画期的な連続講座でしたので、すぐに応募しました。でも、「わたし研究」って一体何だろう?わたしは、わたしのことをわかってるつもりでいるけど、何を研究するんだろう?……と、興味津々でした。
── そのモヤモヤした焦燥感、わかります。大胆にも大きなチラシをブッ込んだ豊能町さん、みなさんの注目度は半端なかった。Good Jobです!
── そこで何かに引き寄せられたみなさん、講座では、具体的にどんな事を学ばれたのですか?
三好:講座では、自分の気持ちや昔の自分、身近な人との関係性などを言葉にしていくことで、自分自身の心の中を整理していきます。自分を苦しめているモノが何かわからないまま生きてきたけれども、整理をすることで、今度は許せるようになり、気持ちが穏やかになった。自分の心の中の整理=前進できる力になるのを感じることが出来ましたね。
── なるほど……思いを言葉にし、自分の口で話すことでスッキリして、心にゆとりが生まれるような気がします。
Mothers Smile わたしが変わることから見えてくるもの
── 講座を受講後、みなさん自身に何か変わったことはありましたか?
稲本:家族に対して、イライラしていたことが「まあいいや」「そういう考えもあるよね」と、受け入れられるようになりました。
三好:全て否定で返していたところを、一旦、肯定して返せるようになりました。なぜなら講座では、全員全肯定で聴くことが基本。何もジャッジせず、アドバイスもしない。回を重ねるうち、研究室の仲間に話を聴いてもらうことで、安心感を得たり、元気をもらったりするようになりました。無理して全部話さなくてもいい、という大前提もあり、話したいことだけを話していく。そうすると、また嫌なことがあった時に、今度ちょっと聴いてもらおう、とクールダウン出来るようになりました。
── それってすごくないですか?家族には、つい言いたいことをぶつけがちですもんね(汗)では、今までで特に印象に残った講座はありましたか?
稲本:講師の松原明美先生(一般社団法人こころ館代表理事)のお話の中で、「いかに人の期待する人生を歩いてしまっているか」という言葉がありました。最初ピンと来なくて、そんなものじゃないかなぁと思っていました。
でもそれは、「わたしが本当に望んでいる生き方ではなく、人から認められる為・人の期待に沿う為の『わたし』を生きてしまっている」ということでした。まさか、自分がそんな風に生きているかもしれないなんて、思いもしませんでした。
三好:「期待に応えなくっちゃ」と、人の目ばかりを気にして過ごしてしまっている、ということなんです。
稲本:その後も「本当に自分がやりたいことは何なのか?本当に自分が望む生き方は?」というテーマを、あらゆる角度から研究し、自分の内側から探っていくワークが続きました。それぞれの気づきを研究生どうしでシェアすることで、更に理解が深まりました。「これからどんな風に生きていきたいか?」という勉強など、見たことも聞いたことも無かったので、とても心が揺さぶられました。
和田:親のことを考える講座があり、子どもの頃の自分を思い出し、そこから今の自分に戻ってくる過程で、自分らしさがどう変わったかを探りました。変わったことの中には、良いことも悪いこともありましたが、そこは全肯定で「どちらでも大丈夫なんだ」と受け取れるのがいいところでした。
稲本:「こんな考えしたらアカンやろうか、いいやろうか」と戸惑っていると「湧き上がってくる感情に良いも悪いもない」と、松原先生に言ってもらいました。
── 無意識のうちに、自分らしくない人生を歩いていたとは、驚きです!研究室に行けば、まだ見ぬ自分に会えそうな気がしてきました。
前回のWalking WEマーケット「自分らしさ診断」の様子
家以外の安心できる居場所に
── そして2019年、市民団体「とよのわたし研究室」を立ち上げたのですね。現在はどんな活動をされているのですか?
三好:1つは、マルシェやWalking WEマーケットなどのイベントで、診断ツールである「自分らしさ診断」を行っています。30の質問に答えることで「今、自分らしく生きているのか」「自分らしくないときの傾向」などを見つけることが出来ます。興味深いことに1度受けた後、一定期間をおいて再度受けると、違う結果が表れることもあるそうです。状況が変化することで、自分らしさが変化していくのです。リピートには、傾向や状況に応じた自分の行動や、考え方の予測がよりつかみやすくなる良さがあります。今後、この診断結果のデータを集積・分析し研究テーマとする計画ですが、まだまだデータが不足しています。幅広い年代や地域の、より多くの方に診断を受けていただき、リピーターを増やしたいと考えています。もう1つは、お母さんたちのお話を聴く会など、少人数でのワークショップを開催しています。しかし、現状況下では開催が難しく、オンラインも検討しましたが、直接目と目を合わせ、お話を伺いながら、その方の気持ちを引き出すことを大切に活動してきたので、残念ながら休止しています。今後、状況が変わり次第再開する予定です。
── 自分らしさ診断で、自分の行動の予測がつかめるなんて、是非わたしも定期的に受診したいと思いました。最後に、これから「とよのわたし研究室」はどんな存在でありたいですか?
三好:まずは、お母さんに安心して過ごしてもらう”心の拠りどころ”でありたいですね。お母さんが笑顔でいることで、ご家族や周りの方も笑顔になり、その輪が広がるとやがて豊能町が自分らしく幸せに生きる人でいっぱいになると考えます。取りたてて何かをするわけではないですが、何かあった時は研究室に寄って「本当は自分はこうしたかったんだ」「自分はこんなことで落ち込んでるんだ」と自分を見つめなおす。そして、少しでも元気になってもらう。気軽に話せる近所のおばちゃんのような存在でいいんです。身内には話せないけど、全く知らない人だったら話せることもある。講座でのわたしたちが、知り合いではなかったのと同じで、知らない人だからこそ、話せたことで安心感を得られました。
稲本:「とよのわたし研究室」は、種まきをします。その種があちこちで芽吹いて花が咲くような、そんなお手伝いをしていきたい。「疲れた時、あそこに行くと楽しいし、話を聞いてくれるよ」と言ってもらえる場所でありたい。体験していただくと、間違いなくその良さを感じていただけます。
インタビューを終えて
お話を伺って、人も町も魅力的になっていくには、町に無いものねだりをするのではなく、一人ひとりが自分らしさを知り、可能性を発揮することなのでは、と思いました。研究室はその核<コア>となる自分らしさを育てる場所。ここでつかの間の休息をとったり、誰かとつながったりすることで、またフラットな状態でそれぞれの場所へ戻っていく。ここにも豊能町のブランドメッセージ「曲がりくねって、ただいま。」を見つけました。
◆ このプロジェクトの連絡先
市民団体とよのわたし研究室 代表:三好 麻理子(みよし・まりこ)さん
Mail: toyono.watashi2019@gmail.com
公式HP:https://toyonowataken.wixsite.com/website
【お知らせ】Walking WEマーケットで「自分らしさ診断」を実施します。自分らしさを見つけに是非お越しください。お待ちしております!
4月4日(日)in新光風台
6月6日(日)in 余野
◆ SUPPORT – 応援おねがいします
- プログラムのモニター協力
- 寄付の援助
- 拠点のご提供(吉川支所近くの物品保管場所と駐車スペース)
取材日:2021/02/11
文・撮影:てつこ
写真提供:市民団体 とよのわたし研究室
取材協力:たるてぃーぬ
1 comment
最初「わたし研究室」という名前を知った時は、いったい何だろう?と不思議でした。以前いちど高山のイベントで私も「診断」していただきました。質問を受けながらぽつぽつと答えるうちに、す~~っと自分の言葉が研究員の方の中へ入っていくような感じがして、とても心地よかったのを覚えています♡自分らしくあること、そのままを受け止めてもらうことが、笑顔でいることへ、周りの人々を大切にすることへと繋がっていくのですね…。
まずは”おかあさん”から!なるほどです☆おとうさんへも、おじいちゃん・おばあちゃんへも、子どもたちへも‥‥広がっていきそうですね\(^o^)/