豊能町吉川に有ります吉川小学校。この学校は、幕末から明治6年まで西方寺(吉川中の町)で寺子屋として開設していて、明治7年(1874)に吉川小学校として開設され、150年の歴史のある豊能町で一番古い学校です。すばらしい自然環境の中で、約90名が勉学に勤しんでいます。
吉川小学校上空より、中の町、下の町、ときわ台、東ときわ台、光風台を望む。
令和3年9月、文部科学省は、多様な体験の積み重ねが子供の健やかな成長を促すとする研究結果を公表しました。
子供の頃にキャンプなど自然体験やボランティヤ、多様な遊びや読書といった体験の回数が多いほど、自分には能力や価値があると感じる「自尊感情」や外向性などが高い傾向だったという。
8歳(小学2年生)前後の一年間に学校活動以外で自然体験(キャンプ、海水浴、ウィンタースポーツなど)を行った回数と、17歳(高校二年生)時点の自尊心感情との相関関係を調べた。その結果、体験回数が多いほど、成長後の自尊感情が高いことが判明した。
家庭の収入水準にも結果は左右されなかった。
「これまで直感的にとらえられてきた」『体験活動は子供にとって大切』という裏付けることが出来た」と指摘。
家族など周囲が「意図的、計画的に体験機会を設けることが大切だ」としている。(産経新聞より)
今回、サポター活動をしている中で、下記のように、小学生が「自尊心」「多様性」が生まれたの少しでもお役に立てたのでは感じています。この様に小学生の自主性が生じたことに大変うれしく思っています。
初谷渓谷上空より
私は、5年前より、吉川小学校の児童を吉川地区(主に初谷渓谷、高代寺山)の生態系の多様性等を調査しながら、サポーターをさせて頂いています。この地区は、昔は里山として動植物を育て炭焼きと農業で生計を立てていました。
しかし昭和30年ごろの燃料革命により、現在では里山としての名残りがあるだけの雑木林になりつつあります。
その自然環境の中で動植物は絶滅したものもあり、新しく増加しているものもあります。その中でも吉川地区は希少動植物が生存しています。四季を通じて、環境の変化を感じながら子供たちと一緒に捕獲したり、学校で飼育したり、また、座学もして、その活動のお手伝いをしています。
小学生達には肖像権がありますので、写真掲載は出来ませんのでご了承ください。
水性生物捕獲場所(吉川地区中の町、吉川自治会館東側の平井川)
平井川は吉川地区の上の町、中の町に流れ、初谷川と合流する約1.7kmの川。昨年はこの場所で捕獲しました。
毎年、10年以上前から川の水質検査を従来は初谷川でしていましたが、昨年はこの平井川で3,4年生と一緒に捕獲し判定検査をしました。本格的には8年前から実施しています。環境省が水質階級を設定しています、「水質階級Ⅰ(きれいな水)、「水質階級Ⅱ(ややきれいな水)」、「水質階級Ⅲ(きたない水)」「水質階級Ⅳ(とてもきたない水)」と設定しています。各階級に生息している水生生物を設定しています。例えば、「サワガニ」が生息していれば「水質階級Ⅰ」で「きれいな水」に、「カワニナ(蛍が卵を産みつける貝)」が生息していると階級Ⅱが「ややきれいな水」になり、「タニシ」が生息していると階級Ⅲが「きたない水」、「ザリガニ」が生息していれば、「水質階級Ⅳとてもきたない水」に判定します。
初谷渓谷、平井川に生息している主な水性生物
サワガニ、80数匹とれました。捕獲後、この様に品種ごと分けて行きます。
カワニナ他
カワムツ他
捕獲した水生生物を、種類ごとに分けて同定します。
捕獲集計用紙;全員で捕獲した各水性生物の数を数えました。その結果、水質階級はⅠ、Ⅱだけでした。
前年、初谷川で検査した時よりも、サワガニの数量は平井川の方が多かったのですが、カワニナの数量が平井川の方が多かったので「ややきたない」との判定になりました。
この結果、吉川地区に流れている初谷川、平井川は大変綺麗な川であると証明されました。大阪府下でも1,2位のきれいな川です。
後日、児童が平井川が汚れていると気づき、きれいにしなくてはとの気運が高まり、自分たちの通学道もきたない、花折れ街道もきたないと思ったらしいです。
担任の先生の指導ではなく、学童たちの自主的な考えで、通学路、花折れ街道をきれいになるよう掃除をする事になり、昨年11月中旬に、父兄、サポーターの参加でゴミ掃除をしました。
その後、児童がポスターを作成したので、通学路、吉川自治会館前、花折れ街道、初谷渓谷ハイキングコースに立てました。
文科省が発表した通り、水生生物を捕獲し、水質検査をした結果で、このような自主的な素晴らしい自尊感情が生まれ、今後、勉強も頑張り、この様に生態系を観察しながら、このような多様性の人間になることを期待します。
7枚のポスターを作成。
通学路に立てました。
吉川自治会館前に立てました。
モリアオガエル;日本固有種、本州に生息。天然記念物にしている地域もあります。森林内の河川や池の近くで湿気ている木の上で生活をしています。
モリアオガエルの卵塊
6月、高代寺参道の横にあります池に卵塊を児童と捕獲しに行きます。この卵塊を学校に持って帰り、オタマジャクシになるまで飼育観察します。オタマジャクシが大きくなると池に返します。
コミナミ入り口付近(初谷渓谷入口)
7月にこの場所で水生生物の捕獲をします。もちろん捕獲した水生物は元に戻します。昨年は東能勢小学校、光風台小学校の参加があり、ワイワイガヤガヤでした。
金ケ谷池(吉川中の町に現存):この池は、水利権はコミナミの田んぼの農家の人のものでした。明治の終わりごろ、経済が成長期に入り、高台の人は今まで畑で野菜を作っていましたが、米の需要が増えてきました。米を作るのには水が必要です。
そこで「コミナミの田んぼ」の所有者たちに初谷川の水を欲しいとお願いしました。当時、水は死活問題でなかなかくれなかった。交渉に明治27年から明治38年まで10年かかり、その間、いろいろ権利者に接待をしてやっと許可をもらったようです。
それから初谷川の入口から約1km上流から水路を引き、下の町の上の山の中に「金ケ谷池」を作り、いったんこの池に水をためて米を作るときに堰(現在でも6月頃)を開け、高台のたんぼの所有者に流した。
小学生には、水の大切さを主に教えています。
四季の金ケ谷池
オオムラサキ飼育ケージ
令和3年より、オオムラサキ(準絶滅危惧種)を飼育すことになりました。
オオムラサキは年々減少傾向に有り、全国的にも一時より10%ぐらいの減少しているとの報道があります。
初谷渓谷ではオオムラサキの生息している「ケヤキ」の木があります。12月ごろ、児童と一緒に幼虫を捕獲しに行きます。持って帰り、学校のケージで飼育観察をしています。羽化する(6月ごろ)と児童と一緒に放蝶します。
昨年12月、初谷渓谷で児童と一緒に幼虫を捕獲に行きました。オオムラサキの幼虫(1.5cmぐらい)は背中の突起が4列あります。12月から3月中旬頃まで冬眠をします。暖かくなり、ケヤキの芽吹きが始まると、幼虫は木に登ってきます。
左が幼虫(全長7~8cm)5月下旬頃、この時期、葉をたくさん食べます。右上が幼虫から蛹化した蛹(6月上旬)。
6月下旬ごろ羽化します。左がオス(15~20cm)、右がメス(20~25cん)、メスのほうが大きい。
羽化後、1週間後ぐらいに放蝶します。手の上にオオムラサキを乗せ、しばらく手に止まっていて、それから飛んでいきます。この時、児童は大変喜んでくれます。