夏休みに、子どもからお年寄りまでが参加できる「夏のがっこう」を開催予定の本プロジェクト。地域の方などが講師になり、さまざまな種類のプログラム(地域の歴史や自然、健康、木工、手芸、工作、料理など)を開催します。地域の魅力を包括的に伝え、時間割のようなプログラムから参加者は好きな「授業」を選び、地域の魅力を実体験できるというものです。
プロジェクトを実施する団体は認定NPO法人コクレオの森。
2004年から箕面市で、子どもの主体性を育む学校であるオルタナティブスクールを運営。さらに、自己肯定感を育むための子育て支援事業、大人の学びの場や対話の文化を広めるための事業、人と人、人と自然が調和する暮らし方の普及や信頼によって結ばれるまちづくり事業にチャレンジしています。
箕面市でオルタナティブスクールを運営するコクレオの森が、なぜ豊能町を活動場所として選んだのか。子どもだけではなく全年齢が楽しめる「夏のがっこう」とはどういう場所なのか。元公立教員の経験があり、当法人の理事を務める藤田美保さんにお話を伺いました。
地域社会が自分ごとになる関係性をつくっていく
ーーコクレオの森では、オルタナティブスクールを運営されていますね。具体的にはどんな教育をしているのですか?
子どもの興味関心を中心に、子ども自身が作るカリキュラムをモットーにしています。何のために学ぶのかというと「社会の一員になるため」と考えています。「社会の一員」とは一市民として自分の権利や自由をはっきり自覚した上で、対話をしながら持続可能な社会や持続可能な世界を作っていく、一人一人が尊重され、人だけでなく自然も大事にしていく。そういった民主的な生き方をする人を増やし民主的な社会を作りたいと思っています。わたしたちの学校では、いかに「民主的とはどういうこと?」「持続可能とはどういうこと?」なのか、カリキュラムの中で考えられるようにつくられた学校なんです。
ーーなるほど。子どもが主体になって学んでいき、一人一人を尊重するような教育なんですね。「持続可能な社会」や「民主的な生き方」という言葉が繰り返しでてきましたが、具体的にはどんな社会や生き方を指しているのでしょうか?
今までのような大量生産や大量消費、競争、個人主義ではなく、地産地消やお互いに助け合いながら顔の見える関係、何か問題があったときは対話で解決していくようなwin-winの関係を大切にする社会や生き方を目指しています。自分の家や家族だけじゃなく、地域や社会全体で今どんなことが起きているのかを考え、その関係性をみんなでつくっていく。地域社会が自分ごとになる関係性を理想としています。具体的には、誰が作ったものかわからない安いものを買うのではなくて、顔を知った人から買う、ストーリーのあるものを買う。そんな暮らしをつくりたいと考えたときに、里山地域の文化が理想に近いのではと考えるようになりました。
わざわざ行きたいと思える場所。都市部から自然豊かな里山地域へシフトしていく時代へ
現在メインの活動は箕面市ですが、川西市黒川地域でも月3回親子向けのイベントをされ、里山地域での活動にも力を入れています。
ーー里山の中でもまず、川西市黒川地域で活動を開始された理由はあるのでしょうか?
最初から川西市黒川地域に限定していた訳ではなくて、元々豊能町や能勢町を含めた地区一体を素敵な場所だなと感じていたのですが、ご縁があり黒川の公民館で活動をしています。豊能町では、「ただいまマルシェ」でSDGsのワークショップを、トヨノノドリーム事業の図書館枠で親子向けワークショップを開催しました。
ーー今までは「箕面こどもの森学園」というお名前でしたよね。2018年に「コクレオの森」という名前に改名したのは、やはりこれから里山地域での活動を広げていきたいという思いからでしょうか?
そうですね。やっぱり地名が入っていると、どうしてこの地域で活動しているの?と疑問に思われることもあったんです。地名にとらわれずに、自分たちがいいなと思う地域で活動を広げていきたいという思いから改名しました。元々、箕面市を選んだ理由としては、アクセスのいい場所で緑も豊かなところに魅力を感じ活動をしてきたんです。しかし、最近では震災やコロナの影響もあり、世の中の意識がだんだん都市部から自然豊かな場所を求めてきているのでは?と思うようになりました。豊能や能勢地域へ「遠くても行きたい」と思ってもらえる時代になってきていると感じています。
地域をもっと豊かに。あなたと一緒に地域や未来を創っていきたい
世の中の意識も後押しになり、里山地域での活動をもっと広げていきたいと、自信を持って踏み出せるようになったと語る藤田さん。新しいスタートをきるために今の法人名に改名しました。
ーー「コクレオの森」という名前に込められた思いを教えてください。
コクレオのコは英語で「共同」、クレオはエスペラント語で「創る」という意味があります。いろんな方と一緒に地域や未来を創っていきたいという思いが込められています。
ーー「森」はやはり里山地域のイメージですか?
よく聞かれるんですけど、実は違うんです。組織は生き物だと思っていて、一つの組織は人の集まり、つまり共同体だと思うんです。一人一人がチームや社会を作っていく。それが、一本の木が集まって多様な森を作っていくイメージに似ているので「森」という言葉を使っています。
ーー今回の「夏のがっこう」も、そういった願いが込められているのでしょうか?
そうですね。参加者も一本の木、先生も一本の木。いろんな人が集まって森を共につくりたい。そんな多様で豊かな森を作っていけたら、地域がもっと豊かになっていくんではないかと信じています。
地域の魅力を発信、発掘。みんなが先生になれる学びの場。
「夏のがっこう」に多様な人が集まって、地域をもっと豊かにしたいと藤田さんは笑顔で答えてくれました。「がっこう」という場所に込められた願いに迫ります。
ーーワークショップやマルシェなどではなく「がっこう」にこだわった理由は?なぜひらがな表記にしたのですか?
マルシェでは買う、出会うという関係で終わってしまうと思っていて、今回はもう一歩踏み込んで地域の人と関わっていきたいという思いがありました。地域の人にとっては魅力を伝えること、参加者は地域を深く知ることができると思っています。
ネーミングはまだ仮なんですが、誰でも先生になれて、様々なことを伝えたり学んだりできる。子どもだけではなく、大人も学ぶことができる。「普通の学校とは違うんだよ」と伝えられたらと思っています。
ーー具体的にはどんな授業や先生が集まる予定ですか?個人の趣味のようなものでも大丈夫なのでしょうか?
もちろん大歓迎です。ビーズやエコバッグ作りのようなワークショップや、地域の歴史・風土を学べるようなものも魅力的ですね。
ハープのワークショップや不動産相談、ジビエ料理を食べる体験など、トヨノノ応援会に参加されているプロジェクトの方にも協力して頂けたらいいなと考えています。
また、授業以外にも食べ物など地域のお店の販売コーナーがあれば盛り上がりそうだなと思っているので、多種多様な人が集まる場になればと思います。
ーーたくさんの授業があって、自分の好きな授業を選ぶのも楽しみの一つになりそうですね。参加者の対象は町民の方限定でしょうか?開催場所も教えてください。
参加者は町民の方以外でも小・中学生、高校生、地域の方、里山が好きな方、子育て中の方など「夏のがっこう」に関心をもって参加してくださり一緒に創ってくれる人たちなら誰でも大歓迎です。中高生の方が来られるのは少ないかもしれないですが、ぜひ地域の大人の人と対話してほしいですね。子ども向けの絵本ワークショップやクラフト体験なども取り入れる予定なので未就学児で楽しんでもらえたらと思います。
開催場所についてはまだ決まっていないので、行政の方と相談しながら進めていく予定です。
町内、そして町外へ。人の輪が広がって豊かな森になっていく
全ての方がそれぞれ好きなことを学ぶ一日。地域で魅力的な人がいればいるほど、授業の数も無限に広がっていきそうです。「がっこう」という場から地域の未来につながる可能性を感じます。
ーーこのプロジェクトのゴールは、イベント当日に楽しむことがゴールなんでしょうか?それともその先も何か考えておられますか?
まずは当日、先生も参加者も双方が楽しんでもらえたらと思います。地域の方が活動の思いを伝え、それが参加者に届くということはすごく大事なことです。でも一回のイベントですぐに結果は出ないと思うので、継続して開催できたらいいなと考えています。
継続していく中で、人と人がつながりお互い助け合う関係が生まれ、地域で生きることを楽しむ人がたくさんいる町になっていけたらと思っています。このイベントを契機に、それぞれが思い思いのイベントを各自開催していくことで、町外からもたくさんの人が遊びにきて、町のファンになっていく。最終的には移住してくれると嬉しいですね。
ーーまずは町で住む人たちが良好な関係性を築いた上でいきいきしていること、そこから町のファンに繋がっていくのですね。
移住を考えるときに、「どんな人が住んでいて、どんなことをしているのか」がわかった方が安心すると思うんです。そこで当日は、時間割プログラムとともに、各授業の先生についての情報や活動場所をまとめたMAP等を掲載した資料を配布する予定です。そうすることで資料を見て気になった人や活動に、問合せや参加することができ、イベント後も地域と繋がることができると考えています。「どんな人が住んでいて、どんな活動をしているかわかっている人がたくさんいる」それがまちを活発にしていくのではないかと思っています。そんな豊能の未来をつくっていきたいですね。
『夏のがっこう』を通して町内外の人に、素敵な出会い、人とのつながりを広げていきたいと意気込む藤田さん。多様な人が集まる豊能町。どんどん人の輪が広がり豊かな森のように輝く未来が目に浮かびました。
◆ このプロジェクトの連絡先
認定NPO法人 コクレオの森 藤田美保さん
Tel: 072-735-7676
◆ SUPPORT – 応援おねがいします
- 授業を担当してくれる方※ご推薦も可
- 出店可な地域のお店
取材日・2021/02/05
文・相澤 由依
写真提供・認定NPO法人コクレオの森
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「辻正矩さんのお話を聞く会」のご案内
こどもの数が減った地域の小中学校の統廃合が進んでいます。豊能町も例外
ではありません。でも、ちょっと考えてみませんか? 小さな学校には魅力が
無いのでしょうか?
辻さんは、著書『小さな学校の時代がやってくる』の中で、「中山間地域の
学校のもつ魅力を増進して、地域外からも子どもたち(家族も)がやってくる
ようにする」「このような地域にこそ、小さくて魅力のある学校をつくる必要
があります」と書かれています。そして、既に、NPO 法人立「箕面こどもの
森学園」の運営を通して、小さいけれどもユネスコスクールやサスティナブル
スクールの認定を受け、魅力ある学びの場づくりを実践されています。
辻さんは、また、公立学校でも「管理主義的ではない小規模で親密な人間関
係のある職場環境をつくり、民主的で自主的精神に富んだ市民を育む教育をす
る学校が必要なのです」とも述べられています。豊能町のこれからの学校づく
りの参考になるお話がたくさん聞けそうな予感がします。たくさんの方の参加
をお待ちしています。
日時:2021 年 8 月 1 日(日)14:00~16:00
場所:豊能町 中央公民館(大会議室)参加無料
講師:辻正矩(つじ まさのり)さん
『小さな学校の時代がやってくる スモールスクール構想・もうひ
とつの学校のつくり方』(2021年 築地書館)著者。箕面こどもの
森学園学園長、認定 NPO法人コクレオの森代表理事、学校法人きの
くに子どもの村学園理事、多様な教育を推進するためのネットワー
ク副代表など。
連絡先:辻正矩さんのお話を聞く会
増田 090-4646-7531
イベントのご案内ありがとうございます!