「チターハープ」という耳慣れない楽器の名前を初めて聞いたとき、古いヨーロッパの楽器ツィターとアントン・カラスのことを思い出していた。
バリアフリーハープ楽団を主催される松浦さんにお会いすることになり、グループレッスンの場に招かれ、楽しみにしてインタビューをしてきたけれど、日本で初めて「チターハープ」という楽器を自ら製作した松浦さんは、やっぱり想像したとおりの、スーパーエネルギッシュな女性だった。
初めてでもいきなり弾ける楽器「チターハープ」
── こんにちは。今日はどうぞよろしくお願いします。
松浦 ええ、こんにちは。ようこそおいでくださいました。
── さきほど初めて皆さんが演奏されるのを見せていただきました。本当に、初めてチターハープに触れる方が、
いきなり曲が弾けるんですね!
松浦 そうなんです。びっくりしました?
── そんなにたやすく譜面の初見で弾けるものとは思いませんでした!
秘密は、この独特な譜面なんですね。
松浦 ええ。「星座楽譜」っていうんです。
── 星座楽譜?ホントだ!譜面が星座のように線で描かれてるんですね。名前までキラキラしてる。
(弦の下にセットされた楽譜にしたがって指ではじくだけで美しい旋律が……。)
バリアフリーハープという意味はこのことだったんですね。
チターハープとの出会い
── このチターハープという楽器に出会ったきっかけは、何だったんですか?
松浦 数年前に約2年間ほど、体調を崩して死線をさまよっていたことがありました。意識はあっても、ほとんど寝たきりの状態が長く続いていたんです。
── 今の松浦さんからは、ちょっと想像がつかないですね。
松浦 生きる気力を失っていた頃に、病院に置いてあったチターハープと出会いました。楽器を手にした瞬間に弾き方がわかり、いきなり弾けて、まるで頭の中の電球がパッとつくような感覚でした!
── すごい感覚ですね。重い病だったというのも、関係があるのでしょうか?
松浦 そうですね、私の場合、かなり知覚が鋭くなっていたんだと思います。
それで、もうそれからはチターハープを触りたい、もっと弾きたい一心で夢中になって弾いていたら、少しづつ症状が軽減していったんです。
── 音楽の力はスゴイですね!
松浦 ええ。私はそれまで音楽に無縁だったので、どうせ私に弾ける楽器はないだろうと思っていたんです。
── すごい出会いだったんですね。
松浦 その出会いによって、奇跡的に社会復帰できたことで、私は人生が劇的に変わりました。
物事の優先順位が変わって、今では、やらなければならないことよりも、好きなこと、やりたいことを優先するようになりました。そして、その方がパフォーマンスも上がることに気がついたんです。
── でも、松浦さんにも、やらなければならないことはあると思うんですが、そこはどうされているんでしょうか。
松浦 もちろんそうです。社会で生きていく上で、好きなことだけをして生きていけるわけではありません。
ただ、まず好きなこと、やりたいことをするととても気持ちが前向きになって、そして、心が安定します。
その状態で、今度はやらなければならないことをする時に、前向きで、安定した心のおかげで、パフォーマンスが上がっていることに気がついたんです。
── なるほど!そういうことなんですね。チターハープの出会いで、人生が大きく変わったんですね。
松浦 ええ、二度目の人生を生きるチャンスを得て、目標がはっきりして、生きやすく、楽しくなりました。
日本初!国産チターハープ
── それにしても、楽器を自分で作るっていうのはスゴイですが、きっかけは何だったんでしょうか?
松浦 まずは、この楽器への恩返しですね。それと音楽の持つ力に気づいて、その恩恵を多くの人に届けたいと思って、音楽療法士になりました。
── 演奏だけではなく、楽器製作までハンドメイドで手がけられた。これが、私はスゴイなあって思うんです。
松浦 もともとあるチターハープという楽器は、大変素晴らしいもので、私自身とても大好きです。南ドイツあたりの楽器ですね。
ただ、少々高価なので、多くの方が演奏することは難しい。もう少し安価な輸入品もあるのですが、楽譜や交換弦の販売、メンテナンスもない”使い捨て”だったのと、コロナ禍で輸入の予定が立たなくなってしまったからなんです。
── またしても、この感染症の影響ですね……。
松浦 それで、国産のチターハープを作りたいって思ったんです。それも、国産・価格・奏法・演奏活動をトータルで垣根のない、バリアフリーにしたかったので、オリジナルの楽器と楽譜を作って、自分で広めようと決めたんです。
── わあ!でも、それをハンドメイドで自作するなんて。
松浦 木工家具の会社に頼んだりもしたんですが、うまくいかなくて。
で、それなら輸入を待ったり、人を頼らずに、自分で作ろう!と。
── その「へこたれなさ」がスゴイですね!普通は、そこであきらめます。
松浦 そこからは、住之江区のアルプル木工教室で。
── 木工!?経験があったんですか?
松浦 全くの初めてで、やったことはなかったです。図面は星座楽譜を書いていたので、線をひくのは慣れてました(笑)。
ペイントは、かえる君のウッドチップアートさんが助けてくれたんです。
── やっぱり、そういう方が助けてくれるんですね。
松浦 初めての木工で、オリジナル楽器製作にチャレンジして、作れたんです。
── 日本初の国産チターハープ!それがこの「かわいいチターハープ」ですね。
松浦 “Kawaii”(かわいい)という言葉は、最近外国でも使われるようになってますね。
それに、有名な「Kawai楽器」よりも「i=愛」が一つ多いんです(笑)。
このプロジェクトで叶えたいこと
── このプロジェクトを通じて、豊能町で叶えたいことはなんですか?
松浦 音楽療法士が作った、誰でも簡単に弾けるチターハープで、世代を超えて楽しめるかわいいチターハープの「バリアフリーハープ楽団」を広げていくこと。そして多くの人たちの心が、この町でつながればいいなと思います。
── その夢を叶えるために、どんな応援があればいいでしょうか?
松浦 スポンサーであったり、ボランティアの方、活動場所、ハープ製作をお手伝いしてくださる方、どんな形でも応援してくださる方がいらっしゃると嬉しいです。
── 最後に直接お読みいただいている方へのメッセージはありますか?
松浦 楽譜が読めない、演奏経験がない、楽器に挑戦したけれど挫折した、私には弾けないと思っている方々。大丈夫です!いっしょに「かわいいチターハープ」で楽しみましょう!
松浦 喜美世さん
◆ このプロジェクトの連絡先
夢工房 PEACE*HARP 松浦 喜美世さん
住所: 豊能町光風台
Tel: 090-6320-7070
Mail:peace2020harp@gmail.com
◆ SUPPORT – 応援おねがいします
- ハープを楽しむ仲間
- ハープの製作者
- 楽団を運営する仲間