~過疎の町で輝く日宇さんご夫妻の、幸せな時間の重ね方~

(自作の家の自作の家具の前で、思い出を語り合う日宇さんご夫婦/撮影:宙)
豊能町の宝物:日宇さんご夫妻が教えてくれる、人生後半戦の素敵な過ごし方
大阪北摂に位置する豊能町は2022年に過疎地域に指定され、少子高齢化が深刻な課題の町ですが、「街の幸福度(自治体)」で3年連続トップに輝く“幸せな町”です 。
そこで、私は一組の理想的なご夫婦に出会いました 。金婚式(結婚50周年)を迎えながら、今なお生き生きと人生を楽しまれている日宇寛記さん・京子さんご夫妻です 。
出会いは、図書館の館長さんから、ご主人の寛記さんが手がける木工工房「Woodpecker(ウッドペッカー)」をご紹介いただいたことから始まりました。私が開発した国産初のチター「PEACE*HARP™(ピースハープ)」の改良や専用スタンドの制作でお世話になったほか 、亡くなった夫にもオーダーメイドのオーディオキャビネットを作っていただきました 。

(国産初のチターPEACE*HARP/撮影:宙)

(国産初のチターPEACE*HARP専用スタンド/撮影:宙)
その制作を通じて、寡黙ながらも確かな技術を持つご主人と、いつも明るく社交的な奥様の京子さん、このお二人のバランスの取れた在り方に深く感銘を受けました 。お互いの世界を尊重しながら、散歩や旅行を一緒に楽しむご夫妻の姿を拝見し、「こんな風に年を重ねられたらいいなあ」と心から思いました。
そこで、少子高齢化が進む豊能町に、こんなにも素敵なカップルがいることをお伝えしたく、お二人にインタビューさせていただきました。。
プロポーズは電話で!元ANAカップルのユニークななれそめ
インタビューでは、終始明るい笑顔の奥様・京子さんが中心となって答えてくださいました 。
お二人の出会いは、ANA全日空 。ご主人の寛記さんは飛行機の整備士、京子さんは当時のグランドホステス(現グランドスタッフ)でした 。社内の乗馬クラブで出会いますが、京子さんの落馬事件をご主人が引き起こし(馬のお尻を蹴ったとか)、ご主人の友人の「傷ものにしたんだから、お前が責任取らなあかん(笑)」という後押しでお付き合いが始まったそうです 。まるで映画のようなエピソードですね 。
その後、ご主人からのプロポーズはなんと電話 。
京子さんは「はい」と即答し、付き合い始めて1年後に、お互い末っ子同士で「遠距離恋愛も面倒だから」と結婚を決めたとのことです 。ちなみに、「日宇(ひう)」という珍しい苗字のため、お付き合い当初は家に電話があっても家族に聞き取ってもらえず苦労したという、微笑ましいエピソードも教えてくださいました 。
結婚50周年!夫婦円満を保つ「三つの秘訣」
結婚50周年を迎えた日宇さんご夫妻 。その夫婦円満の秘訣は、結婚するときにご主人から言われた三つの言葉に集約されています 。
- 「お互いを尊重し、干渉しすぎないこと。」
- 「相手が機嫌よく過ごせるようにすること。」
- 「お互いに好きなことをすること。」
この言葉通り、お二人はそれぞれの趣味を深く楽しみながら、お互いを思いやって過ごされています 。ご主人は、京子さんの「飾らないところ、裏表がないところ」、そして「母親譲りの家庭的なところ」を愛し 、京子さんは、ご主人の「ポジティブで前向きな人柄」を尊敬しています 。
特に印象的だったのは、ご主人がお子さんの宿題「お父さんから息子への手紙」に書いた内容です 。「命が尽きる時、『あ~楽しかった!』と言って死にたい。そんな人生を息子にも送ってほしい。」
この言葉には、日宇さんの人生に対する前向きな哲学が凝縮されています 。
お子さんが幼い頃は、京子さんがダンスに行く際にご主人が子守をしてくれたそうです 。帰宅すると子どもがおらず、ご主人が「お母さんを驚かせよう」と子どもたちを押し入れに隠れさせていたという、優しいいたずら心も垣間見えました 。
変わらない日常と沈黙

(しりとりを楽しみながらの日課の散歩/撮影:宙)
そして、お子さん二人が独立された今、お二人での会話は「今度、どこ行こうか」という相談や、相撲、映画、音楽など共通の趣味の話が中心です 。人の悪口や噂話には興味がないため、昔と今で話題の変化はほとんどないそうです 。
毎日の散歩中もしりとりで記憶の回復ゲームをするなど、とにかく楽しいことを考えるのが、お二人の若さの秘訣かもしれません 。元々寡黙なご主人なので、沈黙があっても全く気にならないというのも、長年連れ添った夫婦ならではの心地よい関係を物語っています 。
お互いに人生を謳歌する「好きな世界」
ご主人・寛記さんの世界:ゼロから創造するフロンティア精神
まず、ご主人・寛記さんは、飛行機の整備士というプロフェッショナルな仕事の傍ら、建築や木工に深く傾倒してきました 。その原動力は、「じゃあ自分で作るか!」というフロンティア精神です 。
独学で建築に傾倒し、豊能町に土地を購入した際、「じゃあ自分で作るか!」と、なんと家を2回も建て直したというから驚きです 。2階建てに建て直した際は、単身赴任中も休みの度に帰宅して作業し、外枠と2階部分以外はご自身で手がけました 。父は写真家、母は芸術家という家庭で育ち、「他人に頼むのはあまり好きじゃない、自分でやる方が好き」と語ります 。
航空会社を定年退職後、口コミで木工工房「Woodpecker(ウッドペッカー)」を主宰 。
お客様の「こんなの作れるかな?」という相談には、笑顔で「面白そうやなあ」と興味津々で引き受けてくれる懐の深さがあります 。


(モダンなデザインのハイバックイス/写真提供:日宇様)
Woodpeckerでは、多種多様なオーダーに対応しています 。空きスペースにぴったりのすきま家具やパソコンデスク、学習机、整理棚、電話FAX台といった大型家具から 、ピザカットプレート、ベビーチェア、積み木などの生活雑貨・小物まで 、工夫が凝らされたユニークな一点ものを手がけています 。

(ピザカットプレート/写真提供:日宇様)

(ベビーチェア/写真提供:日宇様)
アメリカのカウボーイのフロンティア精神への憧れから、レザークラフトに挑戦したり、飛行機の模型を作って広い田んぼで飛ばしたりと 、この**「ゼロから作る」精神**は、寛記さんの人生を豊かに彩っています 。

(飛行機整備士のスキルを活かして作ったラジコン/写真提供:日宇様)
奥様・京子さんの世界:ダンスと音楽で地域を照らす


(ダンス計画では曲ごとに衣装も替え、目でも楽しませてくれます!写真提供:日宇様)
そして、奥様・京子さんの人生は、ダンスとボランティア活動で輝いています 。
幼少期に辞めていたダンスですが、マイケル・ジャクソンの流行を機にジャズダンスを再開し、「とっても楽しくて」以来40年間続けています 。
京子さんが情熱を注ぐのが、社協のボランティアグループ「ダンス計画」です 。お母様の入院を機に、「懐メロをジャズダンスでやろう!」とひらめいたのがきっかけです 。コロナ禍を除き、18年間で合計300回近く、活動を継続中です 。自分の親世代が喜ぶ姿、特に心と顔が明るくなったり、立てないはずの人が立って踊り出したりする瞬間に、「この活動は辞められない」と語ります 。
高齢者に対して敬意を持って接することを信条としています 。
さらに京子さんは、60歳以上のシニア劇団「すずしろ」の女優としても活動し 、みのおFMのラジオパーソナリティとして「ケンケンキョンキョンの音楽大好き❤」という番組も担当するなど 、多方面で地域に笑顔を届けています 。
「毎日楽しい!」二人が語る最高の思い出とこれからの挑戦
「今までで一番楽しかったことは?」という質問に、お二人揃って「毎日楽しいし、嬉しい!」と答えたのが、日宇さんご夫妻の真髄を表しています 。
- 最高の思い出: 「子どもが生まれた時が一番嬉しかった」「なんでうちの子ってこんなにかわいいんだろう」と語り、子育てを心から楽しんだ日々 。
- 大旅行: ご主人が旅行計画から手配まで全て行い、夫婦4人兄弟×2組の8人旅をなんと8回も実現したこと 。全国各地を一緒に旅した思い出は最高の宝物だそうです 。
- サプライズ: 誕生日やバレンタインのサプライズ、そして子どもたちをタンスに隠れさせて京子さんを驚かせたいたずらなど、日常の小さなサプライズ 。
これから挑戦したいこと
- ご主人: トランペット 。家では練習できないため、趣味のバイクで一倉ダムに行って、ひそかに吹いて楽しんでいるとのこと。
- 奥様: もう一度ピアノを習い直したい。太極拳もやってみたい 。「お金が入ったら、使い切って死ぬぞ~!」と、最後まで明るく人生を謳歌する決意を語ってくださいました 。
おわりに
過疎化が進む豊能町に、お互いを尊重し、それぞれの世界を持ち、毎日を全力で楽しむ日宇さんご夫妻がいらっしゃいます 。寛記さんの「Woodpecker」の作品は暮らしを豊かにし 、京子さんのダンスやボランティア活動は地域に「元気」という名の光を届けています 。
お二人の姿は、少子高齢化の町であっても、いかに人生を豊かに生きられるかという希望を示してくれます 。日宇さんご夫妻の「毎日楽しい!」という言葉こそが、豊能町の未来を照らす、最も明るい光ではないでしょうか 。
👉木工工房「Woodpecker(ウッドペッカー)オーダーのご相談先
日宇寛記さん TEL/FAX 072-738ー4730
👉2021年、ロク×ロクさんが紹介して下さった私の開発したPEACE*HARP(ピースハープ)記事。
その後、日宇さんとご縁をいただき、改良に改良を重ねてやっと完成しました!
👉豊能町公式サイトはこちら
取材日:2025年3月10日 文・写真撮影:宙(そら)